冨長敦也さん(彫刻家) インタビュー

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冨長敦也さん(彫刻家) インタビュー

冨長敦也さん

日本を代表する彫刻家、冨長敦也さん。普段のお仕事や経歴についてお聞きしました。

── 冨長さんが、彫刻家になられるきっかけを教えて下さい。

冨長:中学生の頃から美術の道に進みたいと思っていましたが、子供ごころに美術といえば絵画だったので、その頃は、彫刻家という選択はなかったですね。
高校に進学の際、美術系の高校に行きたかったんですが、両親が美術系の高校は進路が狭まるのでないかと言って反対したんですね。
それで高校を卒業したら美術系の学校に行く約束をして、いわゆる普通科の高校に行ったんです。

進学した高校で、ちょうど入学の年に赴任してきた美術の先生との出会いがありました。その先生の影響で彫刻に興味をもったんです。こんな表現方法があるのかと。
その先生はその後、彫刻家ではなく作家に転身されました。2014年に直木賞を受賞した、黒川 博行さんです。黒川先生は、数々の文学コンクールを受賞されていますが、賞の受賞など関係なく、黙々と制作する姿勢は、今でも僕に影響を与えていると思います。

── ご両親との約束どおり、普通科の高校に進学してその後、金沢美術工芸大学に進学されました。大学で石彫の道に歩まれたのでしょうか。

冨長:黒川先生は、石彫ではなかったのですが、金沢芸術大学で教えていただいた高橋清先生に石彫を学びました。
高橋先生は、メキシコの大学でも教鞭をとっていた方で、国内外から評価された彫刻家です。
先生の作品は、宇部市のときわ湖水ホールにも作品が設置されていますが、僕が2013年にUBEビエンナーレで大賞をとった時、ちょうど、高橋先生の作品の隣に、受賞作品「Our Love」を設置していただきました。高橋先生はすでにお亡くなりになられていますが、作品で再会出来たようでうれしかったですね。

ガブリエル

── 冨長さんの作品は、一貫して人間を作品の主題とされていますが、その中でもこの世界に人間が存在するということ、そのあり方、有り様を表現しているように思います。ご自身では作品に対する表現やスタンスをどうお考えですか。

冨長:実は先日、大阪の中之島でLOVE STONE PROJECTを開催することになり、20代後半に制作した中之島緑道に設置している「広場─鳩のいる風景」を見に行ったんです。その作品を見て、現在制作している作品とあまり表現方法は変わっていないなと思いました。
「広場─鳩のいる風景」でもそうですが、石彫の場合、巨大な作品になってしまうので、どうしても公共性がつきまとってしまいます。なので、人間存在など個人的な表現をストレートにしにくい側面はありますね。公共の芸術ということで私的なことだけではではなく、パブリックな要素も大事にしていました。

── その公共性のある石彫を選ばれたということは、やはり人との関わりを表現したいという事があったからではないでしょうか。人との関わりの表現が、LOVE STONE PROJECTにつながっているような気がします。

冨長:ユニバーサル・アートという形態がありますが、今回のLOVE STONE PROJECTがほんとうの意味のユニバーサル・アートではないかと思います。
LOVE STONE PROJECTでは、僕がハートの形の石を彫って、そのハートの石をみんなで磨くことで作品を完成させる。そんな参加型の芸術作品です。その際に必要な物は、水と紙やすりだけです。
現在まで全世界80ヶ所、8000人の人々に参加していただいています。小さな子供も、高齢の方も、あらゆる人が、関わりあえる作品(アート)としてこのプロジェクトは意味があると思っています。

── そもそも芸術は、その作品に意味を与えるのは作家ではなく、他者(鑑賞者)だと思いますが、プロジェクトに参加した方々のどのような反応でしょうか。

冨長:このプロジェクトを続けることで新たな関わりあいが生まれています。
教育、医療機関など、僕の意図しないところで皆さんが意味、意義を与えて自らがプロジェクトを企画しようとしてくださっています。

── 冨長さんはよくご自分の作品を河原の石に例えますが。

冨長:河原の石は、、山から海へ流れるうちにきれいな丸い石が完成される。つまり自然の中で美しい造形物が創造されるんです。このプロジェクトも紙やすりで石を磨くというごく簡単な作業で作品を完成させます。石を磨くということは自然と同じなんです。
古来、石との関わりは、権力者(支配者)と支配されるものの関係で関わりあったと思いますが、LOVE SOTNE PROJECTでは、あらゆる人がフラットな関係で石と向き合うことが可能になったと思います。
プロジェクトというからには、歴史や哲学くらい大きな意味を持たせたい。
僕がいなくなっても自然発生的に継続していく、そんな芸術活動になってくれたらいいと思っています。

単純機械(ハンマー)

── アトリエでの制作についてお聞きします。作品の制作では、どんな道具を使って作品を作っているんですか。

冨長:石頭(せっとう)や鑿(のみ)などいわゆる”単純機械”を使って制作しています。あまり電動工具など使わないようにはしていますね。今使っている石頭は自分で柄を作って取り付けています。乾燥した木材を購入して、持ちやすい形に削って作っているんですよ。アトリエも自分で建てました。やはり常に自分の力で、石と向き合いたい。もともと石とふれあうのが好きなんですね。

防寒つなぎ

── 手作業にこだわるのがLOVE STONE PROJECTにつながっているんですね。では、作業する際の服装にこだわりはありますか。

冨長:LOVE STONE PROJECTでは、白の服装にするようにしています。人とふれあうのであまり威圧感の服装を選んでいます。アトリエで作業する際は、Tシャツとジーンズなどラフな格好が多いです。これから寒い時期には、防寒のつなぎ服、靴は釣具店で購入した長靴ですね。

── 休憩時間はどのように過ごされますか。

冨長:草抜きや掃除、寒い時期にはゴミを燃やしたりしてリラックスしています(笑)
食事は、なるべくインスタントのものは食べないようにしています。
アトリエでスパゲッティを作って食べてます。スパゲッティ専用の鍋もあるんですよ。

── 最後にお仕事で使っているこだわりアイテムを教えて下さい。

冨長:こだわりアイテムというよりいろいろ選ぶのが面倒になってきたのでつい同じものを選んでしますんですよ。今はずっと使えるものがいいと思えるようになりました。

京都眼鏡研究社のメガネ

いつもかけているメガネは、京都にある眼鏡研究社のものです。

ラミーの筆記用具

ペンなど筆記用具はLAMYで揃えています。

FREITAG バッグ

かばんはFREITAGですね。耐水性もありますし、粉塵もすぐ取れますので、使い勝手がいいんです。

(2015.10.31 京都府亀岡市 アトリエにて)

 

── 冨長敦也(とみなが あつや)彫刻家 ──

1961年 大阪市生まれ
1986年 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科 絵画彫刻専攻修了
2013年 第25回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)にて大賞受賞
その他受賞歴多数

冨長敦也 ウェブレゾネ http://tominagaatsuya.com
LOVE STONE PROJECT https://ja-jp.facebook.com/LoveStoneProject

written by ven

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